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第六章

 現在、飲み会などでは、周りが気を使って(仲が悪いと思われている)ミノルと星来を近づけさせないようにしている。その事を彼──崇広──は思い出した。
「次の飲み会からは、訳を言って二人を隣同士に座るように手配しようか」
 ミノルにとっては、仲間内での飲み会では、星来が隣だろうと離れていようと今では全く気にはならない。是が非でも隣に座りたい、ということも無ければ、絶対離れて座りたい、ということも無かった。早い話、周りが一緒に座らせようとしても、ミノルにとっての飲み会は別段何の変わりも無い。
 しかし星来が
「家が近所だから会おうとしたらいつでも会える。いつでも会える人間と鉢合わせになるより、飲み会でしか会えない友達の方を大切にしたいから、今までどおりでいいよ」
 と答える。ミノルは、その意見はその意見で別にいいかと頷いた。
「ま、こいつもこう言ってる訳だし、俺とこいつが付き合ってることは特に言わなくてもいいから、今までどおり自然にやってくれ」
 ミノルが言うと
「というより、絶対言わない事。私は空手の有段者だから、もし言ったらどうなるかは自分で想像して」
 と、空手の構えをして崇広を威嚇する星来。以前、酔っ払って街の立て看板を足の一振りで真っ二つにへし折った場面を見た事のある崇広は引きつり笑いをして
「オ・オッケー、わかったよ……」
 と答えた。

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