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第四章

 バレンタイン騒動から数週間がたった。それまでは頻繁にミノルの家に星来が押しかけていたのだが、バレンタインを境にぴたりと収まった。ミノルとしては『ゲーム』イコール『遊び』イコール『飽きるもの』という三段論法で、星来もようやく醒めてくれたか、とだけ思っていた。

「ただいまぁ……って、一人暮らしだから言っても意味無いか……」
 ポストを開ける。ヒラリ、と小さな紙がアパートの廊下に落ちた。手にとって見る。
『電話一本で自宅へお届け! 丸秘ビデオ宅配サービス』
「……私ゃ、女だっつーの」
 クシャクシャに丸めようとして、ふとあることを思いついた彼女――星来――は、そのチラシをもって部屋に入った。
 ミノルの家に電話をかける星来。

『はいもしもし?』
「……」
『もしもし? 誰ですか?』

 ガチャ


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