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第三章

「あ、もうこんな時間か。じゃあそろそろ寂しい我が家に帰るかな」
 直子が時計を見て言った。
「寂しいって、旦那は?」
 ミノルが聞くと
「出張」
 と答える直子。
「さっきマイダーリンのところに帰らなきゃとか言ってただろ」
「あん時はびっくりしたから適当に言っただけだよ。そういうわけでミノル、ホワイトデーにはちゃんと六万相当のプレゼントするのよ。星来ちゃんのチョコが二万円ってのはあたしが認めるから」
「だとさ。大嫌いな私がいくら言っても聞いてくれそうに無いから、直子さん、もっと言ってやって」
 この時ミノルは全く別のことを考えていた。直子は星来を、星来“ちゃん”と言い、星来は直子を、直子“さん”と呼ぶ。直子はミノルと同い年だが……。
「おい、お前いくつだ?」
 ミノルは星来の年齢を知らなかったのだ。
「いくら嫌いな相手でも同じグループ仲間の年も知らないのかよ、アンタは」
 と言いながら星来が自分の年齢を言う。それを聞いてミノルは「こんなガキに俺は振り回されてたのか」と愕然とした。


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