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20R ニューホープ後編

 私は道場の入り口前で、選手移動用の巡業バスを待っていた。
 シリーズ巡業中は、ホテルとか旅館に泊まるのだけど、私はどちらかと言うと枕が変わると眠れないタイプの人間なので、熟睡できない事も時々ある。だけど最終戦、つまり今日は都内だ。夕べは久々に一番慣れてる所(合宿所)で寝たので、気分爽快。

 私と同じく合宿所で寝泊りしている若手選手は皆バスで会場に向かうけど、自分の住処を持っている中堅以上の選手の中には現地集合する人も何人かいる。自宅から会場に行く場合、わざわざバスに乗るために道場に行っては大回りになってしまう人もいるからだ。このように、バスに乗らない選手がいるというのも、都内で試合する場合ならではだ。だけど、沙希さんは合宿所からはかなり離れたマンションに住んでいるにも関わらず、毎回必ずバスに乗るために道場にやってくる。
「だって、会場に行こうにも足が無いから。免許持ってないからね」
 と言いながら、いつも年季の入ったママチャリで道場にやってくるのだ。

 バスがやって来た。道場の入り口前に集まっていた選手達が次々にバスに乗り込む。
「全員乗りましたか?」
 と運転手の村岡さんが声をかける。
「中山がいませ〜ん」
 若手の前座組の中の誰かが言った。
「あ、中山は後で来るから先に出発してくれって言ってたよ」
 と答える沙希さん。
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