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13R 他団体

 試合が始まった。初めて生で見る男子プロレスは、女子とはルールこそ同じではあるけど全く違う競技のように見えた。一言で言うと、同じ大技でも女子はより華麗な技、男子はより力強い技、という感じだ。また、男子は寝技の攻防にかなりの時間を費やすが、女子は常にリング狭しとノンストップで駆け回る試合が多く、寝技の時間帯が男子に比べて少ない。寝技をメインに使うのはNJWPでは柔道出身の中谷さんやアマレス出身の紺野さん位だ。昔、「女子がやるプロレスだから女子プロレスというのではない、女子プロレスは男子プロレスとは違う独立した格闘技だ」と言った女子プロレスラーがいたらしいが、実際に目の当たりにするとその言葉にも素直に頷いてしまう。でも、あくまで基本的なルールは同じ。参考にできるものは参考にした方が自分のプロレスの幅を広げることにもなる。特に私は大柄でどちらかといえばパワーファイターだから、男子の戦い方は手本になる部分がたくさんあった。
「あの助走をつけて力任せに相手の下半身に飛び込むタックル……。すごいな……」
「スピアーね」
「え?」
 どうやら口に出ていたらしい。中谷さんに急に声をかけられて一瞬戸惑ってしまった。
「スピアー……?」
「アメリカのゴールドバーグってレスラーのオリジナル技。アメリカンフットボール出身のレスラーだよ。あの技はアメフト流のタックルの勢いでアマレスの両足タックルをやるって感覚でいけばいいんじゃない? 女子でも使う人、何人かいるよ。NJWPにはいないけどね」
「そうなんですか……」
「愛ちゃんがやったらけっこう映えると思うよ。今度やってみたら?」
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