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拾:硬派の行く末

 彼等は、結成以来二十年を越えるベテランロックバンドだ。ある日、テレビの音楽番組の公開録画の仕事が入り、某局のホールで演奏する事になった。
「てめぇら、ノッてるか──!」
 …反応がない。
 自分達のコンサートではそういう古臭い掛け合いも承知しているファンばかりなのだが、今日の客は同じ番組に出演しているルックスだけのビジュアルバンドが目的なのが痛かった。演奏すればそこそこの反応はあるが、MCになったらお通夜状態だ。
 彼等はあわてた。
「おい、どうする?」
「ちょっとギャグでも言うか?」
「そんなこと俺のプライドが許さないぞ」
 しかし背に腹は変えられない。
「俺らのファンが見たら嘆くだろうな」
 と思いながらもお笑いネタをしゃべることにした。
 ようやくそれなりの反応が返ってくるようになったところで
「てめぇら、どこから来やがったんだ──!?」
 と叫ぶと、一部の客から
「イエ──(家)!」
 と言う声が聞こえた。調子に乗って
「この番組が終わったらどこに帰るんだ──!?」
 と言うと、ようやく意味が飲み込めた多くの客から
「イエ──(家)!」
 と返ってきたので彼等は満足した。

 今、彼等は硬派なロックバンドではなく、“寒い”お笑いバンドとして認知されている。
あとがき