もどる

九:夏の風物

 俺はある工場で生まれた。
 生まれたときから死ぬ事が運命付けられている。
 俺より先に逝った先輩が最後に残した言葉が今でも頭の中に残っている。
『俺たちはな、死ぬ事で人を喜ばせる事が出来るんだ。だから俺は胸を張って死ぬ。お前も死を恐れるなよ。これが俺たちの宿命なんだから。じゃあ先にあの世で待ってるぜ』
 そう言っていた。
 俺は元から死を恐れる事なんて全く無かったが、死ぬ事で人を喜ばせるという意味が全く解らなかった。

 そして、夏が来た。俺と同じ時に生まれた仲間達と一緒に、死地へと向かう。
 仲間達が次々に死んでいった。外から人の歓声が聞こえてくる。
 そうか。そういうことだったのか。
 俺はなぜ死ぬ事で人が喜ぶかをようやく理解した。
 ならば、すごい死に様を見せてやるぜ。
 俺は武者震いした。

 いよいよ俺の番が来た。
 我ながら最後はすごく華麗に華々しく死ぬ事が出来たと思っている。
 見ている人が喜んで叫んだ。

「鍵屋──!!」
あとがき