もどる

第五章

 ミノルは一人で部屋にいるときはたいてい音楽を聞いていた。聞くジャンルは特に決まっていない。街を歩いていて聞こえてくる音楽に何か感じるものがあれば、即その場でCDを買ったりしている。いつだったか、洋楽のヘビーメタルとアニメソングとド演歌を一緒にCDショップのレジに出して、店員に怪訝そうな顔をされたこともあったが、ミノルはそういった事は一切気にしないのだ。
 この日は懐かしめの曲、海外アーティストの「スターシップ」を聞いていた。学生の頃ラジオからエアチェックしたものだ。このアーティストの事をミノルはほとんど知らない。単に好きな曲があっただけのことだ。Sara(セーラ)がそのお気に入りの一曲だった。星来(セーラ)と同じ名前だが、これは偶然にすぎない。この曲をエアチェックしたときには星来の存在自体全く知らなかったのだから。いまこの曲を聴いているときもミノルの頭の中から星来のことは忘れていた。しかし、曲の「セーラ、セーラ」というサビの部分がなぜかサブリミナル的に頭にこびりついていた。
「テープじゃなくてCD買おう」
 そんな考えが頭によぎり、CDショップに向かうミノル。ミノルの住んでいる町にはそういう店は無いので電車でそこそこ大きな街に向かった。

 スターシップのセカンドアルバム「Sara」を手に取りレジに。
「プレゼント用にラッピングしてください」
 なぜそんな言葉が出たのかミノルにも全く解らなかった。


次ページ